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県道沿いにある古民家を改修し自社の事務所兼住宅とした。
既存建物は築年数が古く、数年間空き家となっていたこともあり住宅はかなり傷んでいた。
コストを考えても一度の施工ですべてをクリアするような設計は難しく、完成してからも補強や建物の延命をしていくことが考えられた。
[事務所・住宅部分の改修工事]
[外構の工事]
[外壁・屋根の補修工事]
と3つのプロセスに分けて計画することとした。
[事務所・住宅部分の改修工事]
事務所部分では設計事務所における課題をもとに計画した。
弊社事務所内は設計業務のほかに、施主との打合せを行う場でもある。
近年の打合せでは模型や3Dを使い、より立体的な話し合いができるようになった。
しかしSNSでの情報収集や、写真の雰囲気を参考にし見た目とコスト面のみを考えている要望が増えてきた。
設計では見た目やコスト以外にも検討していくことがある。
「劣化する仕上材の様子、影の落ち方、光の反射、手触り、匂い、冷たい温かい、等の知覚的な要素」
設計事務所では常に考えている事のはずが、SNSの普及により施主との感覚が共有できなくなっていることに気づいた。
そこで古民家の補強や更新と同時に、内部に様々な建材を等身大で感じられるような仕組みをつくり、施主と設計事務所との感覚の共有をより密接なものとできないかと考えた。
床は解体し、水平面の補強を兼ねてコンクリートを打設し、金鏝で押さえ仕上がりとした。
その際大引きは既存のまま残し木材の劣化した姿のままとした。
壁は塗装や漆喰で仕上げ実際に感じられるようにした。
ラワン合板を仕上とした壁は、材によって色や木目が大きく変わるので色の差が出る合板を選び、
仕上りはオイル塗装した部分と素地の部分をつくった。
その他壁床天井にはタイルや木毛セメント等、設計事務所で使う材料を選定した。
家具はアルミの机、木製の机、ポリプロピレンの椅子、陶器の照明等、様々な材質の家具を配置した。
このように同じ空間の中に何種類もの素材を混在させ、素材本来の良し悪しが伝わるように計画した。
またこの先、補強・延命が必要になってくる。
その部分は時代の流れで新たに生まれる建材や流行、補強方法をモックアップのように試していくことで、古民家を延命しながら時代の変化を取り入れていく。
そしてスタッフだけでなくここに住む家族や、打合せに来る施主にも共有できる空間としていきたい。
使用材料:ポーターズペイント、AEP塗装、木毛セメント、フレキシブルボード、コンクリートブロック、ラワン合板、シナ合板、ケイ酸カルシウム板、タイル、ポリカーボネート、アルミ、真鍮、ヒノキ、ポリプロピレン、ウレタン塗装、オイル塗装、コットンリネン、コンクリート金鏝押さえ、構造用合板、漆喰、陶器、FRP、ヒノキ、繊維壁